絶望書店日記

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絶望書店主人推薦本
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』

冤罪、殺人、戦争、テロ、大恐慌。
すべての悲劇の原因は、人間の正しい心だった!
我が身を捨て、無実の少年を死刑から救おうとした刑事。
彼の遺した一冊の書から、人間の本質へ迫る迷宮に迷い込む!
執筆八年!『戦前の少年犯罪』著者が挑む、21世紀の道徳感情論!
戦時に起こった史上最悪の少年犯罪<浜松九人連続殺人事件>。
解決した名刑事が戦後に犯す<二俣事件>など冤罪の数々。
事件に挑戦する日本初のプロファイラー。
内務省と司法省の暗躍がいま初めて暴かれる!
世界のすべてと人の心、さらには昭和史の裏面をも抉るミステリ・ノンフィクション!

※宮崎哲弥氏が本書について熱く語っています。こちらでお聴きください。



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2001/5/22  本よ!メタモルフォーゼせよ!!

 あたしはオンデマンド出版とかいうのがどうにも気に喰わん。いかにも簡便風に見せかけて、なにゆえ何百万もするあんなご大層なマシンを使わなければならぬのか。数万円の家庭用プリンターを改良したもので印刷製本までできぬものか。そうなれば、根本的な出版革命になるのではないか。安価な機械でもできるような折り方を工夫したり、あるいは和綴じで何とかできそうな気もするが・・・・。
 てなことを闇の書物ハッカー組織なぞと電波交信しているうちに、冊子状に最初から交互に折り込んだ細長いプリンター用紙を販売すればいいことに想い到った!これならいまあるロール紙なんかの家庭用連続紙プリンターでもそのまま使えるはずだ!!
 途中で印刷がズレないように用紙の<山>や<谷>の部分を感知する工夫はいるだろうが、これはプリンターに内蔵されているセンサーで対応できるであろう。逆に云えば、普通のカット紙用プリンターを改良しても何とかなるだろう。とりあえず、世界中の学校関係には需要があるだろうから、多少の改良はすぐに元が取れる。数ページまとまったカット紙の原稿を冊子型用紙にコピーする複写機も造れば売れる。
 手折りの袋綴じ冊子はどれほど丁寧にやっても厚みにバラつきが出るし、どうしてもズレが生じる。機械できっちり折っておくと均一な仕上がりで、これだけでも見違えるものになるはずだ。ふたつ折りにすることを前提に調整した厚さや硬さの紙で、白さも抑えたものにすると、かなり従来の<本>に近いものとなるに違いない。
 形状を記憶するほどきっちり折られていると、プリンターを通ったあとは勝手に冊子状にまとまり、製本用テープなどで背を綴じるだけで立派な本となる。表紙を付ければよいが、小冊子にはそのままでも充分だ。両面印刷すれば、読者がナイフでページを切り開きながら読むというなかなか趣がある形式も取ることができる。
 どうも、このような冊子型の書物用途プリンター用紙というのは市販されておらぬようである。特許を取れば莫大なる儲けとなりそうだが、出願料がとても払えぬのでやめることにした。貧乏性のおかげでますます貧乏となるのはいつものことである。紙屋やプリンター屋の諸氏はありがたく押し戴き、大いに販売するように。お布施なら拒みはせぬので遠慮せず施すように。

 同人誌はむろんのこと、ベストセラー以外の本はすべてこの方式で出版したほうがよいのではないかとあたくしは考える。どうも本のプロとかいう輩は己の能力の無さを隠蔽したいがためか己が仕事をしていると思い込みたいがためか些末な完成度にこだわるようだが、そんなものはどうでもよい。昔の本は造りも印刷も遥かにいい加減なものだったが、氣迫のようなものがこもっておる。本の価値は、どれもこれも同じノッペラボウになるような意味での<完成度>とは懸け離れた処に存する。造りにこだわりたければ、装幀で勝負すればいいのである。
 コミケと姉妹関係とも云えるガレキの世界ではあれほどまでに華麗で手を掛けた造型が繰り広げられておるのに、同人誌がいまだに簡素な装幀の並製本ばかりというのはどうにも解せぬ。手造りの布や革で豪華に装幀された本がそろそろ出てきてもよいのではないかと考える。
 プロの世界もベストセラー以外はこんな造りにして高い値段を付けてもよさそうなもんだ。冊子型プリンター用紙は決して本の値段を下げるためにあるのではない。何百万もするマシンに先行投資してリスクを負わずとも、他者や外的要因を排して生産を完全にコントロールするためにある。読者が自身で手造りの装幀を愉しむ文化もそろそろ普及してもよさそうな時局で、そうなれば中身などは簡易オフセット以上に簡易なる造りでいいわけだ。

 そうして、絶望書店主人の眸はさらに遥か地平を向いておる。
 電脳の画面上で文章を読むようになって十数年が経ち、いまでは本より画面のほうが読みやすいという体質になってしまった。それとともにページと云おうか冊子形式と云おうか、そんな形態が優れているという従来の考え方に疑問を持つようになってきた。
 画面上では明らかに区切りのない巻物形式が読みやすいが、どうも印刷物も巻物でよいのではないかと漠然と考えておる。
 よく冊子形式のほうが検索性に優れているようなことが云われるが、日本の本は索引がついているわけでなし、章分けも厳密なものではなく、あたしくの想定しているのは個人の小冊子なので、ひとつの主題を一冊づつに頒ければ目的のページを開くなどという事態が生ずることもなく、製本の簡単な巻物でも良さそうなものだと考えておる。もっとも、あたしが漠然と思い浮かべているのは巻物そのものではなく、特殊な折り方による必ずしも四角ではない<本>のことなのだが。
 人工衛星のパネルを折り畳むのに使われるミウラ折りを識ってから、なんとかこんな方式でできないものかと考えるようになってきた。ミウラ折りはすでに市販の地図では応用されておるから、大量生産することは問題ないのであろう。
 もっとも、これは大きい一枚の紙を畳んだり広げたりするためのもので、当方の想定するのは本のように読みやすいサイズに開くものなのだが。上記の交互に折っただけの冊子型プリンター用紙では背を留めないとバラけるが、ミウラ折りのように少しずらして折り込んでいくとうまい具合に本状にならないもんかと夢想しておる。
 最初から折り目が入っており、プリンターは問題なく使用でき、印刷し終わると加工無しでそのまま本状になっている用紙だ。
 あたしは折り紙は苦手で、本型といってもトランプを扇形に広げた状態のようなものを漠然と思い浮かべることしかできぬ。本のような真四角の立方体ではないほうが面白いし機能的になるのではないかとは何となく想うのであるが。もっと巻物に近くともよいかも知れぬ。
 こういう方面は折り紙愛好者や数学やプログラミングの専門家諸氏のほうが適任であろう。すでに研究している者はいないのであろうか。ここまでくるとあたくしはまったくお手上げなので、諸氏の果敢なる探求を待ちたい。本にメタモルフォーゼと革命をもたらしてみよ!その手で宇宙に罅を入れろ!!グーテンベルクと相並び、本の歴史にその名を刻め!!!
 ミウラ折りの白紙のプリンター用紙が出れば応用範囲は広いような気もするが。近頃の娘さんはよく識らぬが昔の女子高生なぞは便箋を複雑に折り畳んで手紙にしたりしたものじゃが、あんなプリンター用紙が売り出されてもよさそうなもんじゃが。すでにあるのであろうか。

 ところで特許庁で「冊子」などで検索してみると、本に関する特許や実用新案は驚くほどあふれておる。それがまた難しくて、あたしの頭ではどれひとつとして理解できぬ。ほとんど電波の世界だ。
 本の構造なんて簡単なもので、また出願しているのは名のある大企業ばかりなのだから、もうちょっと何とかしてもらいたいもんだ。それともあんなややこしい説明文にしないと審査に通らないのであろうか。これではやっぱり、あたしには特許などとても無理ではあるな。