少年犯罪データベースのkangaeru2001氏が管賀江留郎と名前を変えまして、『戦前の少年犯罪』という本を出されました。
戦前はいまよりも遥かに異常で理解不能な少年犯罪が続発していたことがよく判りますが、そのほかにも戦前の時代というものがよく判るようになってますので、少年犯罪に興味のない方でもおもしろく読めるのではないかと想います。
たとえば、二・二六事件のリーダー磯部浅一の特異な人間性から、二・二六事件はニート犯罪であることを喝破しております。絶望書店日記の私の大義を否定してッ!!などをおもしろく読まれたような方はぜひにも読むべきであるかと。二・二六事件の大義とはなんであったのか、あるいは大義なんてものは誰かからあたえられるものではなく、またそもそも天下国家を良くしたいなんてことではなくて、己のやむにやまれぬ欲求を肥大化させてより大きなものへと投影したものだと理解できるはずです。
三島由紀夫の理想とした、己の精神のみによって己が拠って立つ世界全体のほうを構築してしまうような、磯部浅一のニートとしての頭でっかちの偉大さが顕されています。唯識なんてものよりももっと遥かに積極的な、こちらから打って出て組み替えてしまう、支配し征服する力としての世界認識です。しかも見事に失敗してしまうから、よりいっそうに世界と己が実感できてしまう。
己の構築した物語のなかに入り込んで一緒に滅ぶという、物語創造欲に取り憑かれた芸術家の究極の理想形態がここに現出するわけです。
旧制高校生の話なんかもおもしろいでしょう。ちょうど中曽根康弘元首相なんかが旧制高校生だったころに、最近の学生は教養がなく知能が低下していると嘆かれてたわけです。ここまでまとまった形で旧制高校生の低脳極悪ぶりを暴いた本はこれまでなかったのでないかと想います。いままでいかにバーチャルな現実と幻想を混同するような旧制高校生像が流布していたのか、驚くべき内容です。教養とはなんぞやということを考えるためには必読です。
戦前のひどさだけではなく、あの時代の自由奔放さも如実に判るようになっています。
管賀江留郎氏も云っているように、不思議なことにこれまで誰ひとりとしてこんな基本的なことを調べようともせずに、なんの根拠もなく日本について論じていたわけです。戦後に数多く出された日本論のたぐいはすべて空想と現実を混同した贋物だったわけです。
そうなると、はじめて確かな根拠を示したこの『戦前の少年犯罪』という本は、戦後もっとも重要な本と云っても過言ではないということです。いや、戦後唯一重要な書であると云うべきでしょう。戦前について明らかにしたことではなく、戦後の、そして現在の言論界の低レベルぶり、根本的な教養の欠如を明らかにしたことにおいて、そうであるのです。
現在の知的退廃について漠然と感じているような人も、ここまでの実証的データによって裏付けされていないのなら、それは検証を経ていないたんなるイメージに捕らわれているだけなのは同じことで、結局は知的怠惰集団の一員に過ぎないのです。自分は判っているように感じている読者にも、その知的姿勢を鋭く質す恐るべき本なのです。
これは戦前の書ではなく、現代の問題点を浮き彫りにしたまさしく現代の書であります。現代においてこそ読まれるべき書であります。
みなさま方もぜひ一読されんことを、この絶望書店主人からも強く推奨いたします。
『戦前の少年犯罪』 管賀江留郎・著
昭和2年、小学校で9歳の女の子が同級生殺害
昭和14年、14歳が幼女2人を殺してから死体レイプ
昭和17年、18歳が9人連続殺人
親殺し、祖父母殺しも続発!
現代より遥かに凶悪で不可解な心の闇を抱える、
恐るべき子どもたちの犯罪目録!
なぜ、あの時代に教育勅語と修身が必要だったのか?
発掘された膨大な実証データによって
戦前の道徳崩壊の凄まじさがいま明らかにされる!
学者もジャーナリストも政治家も、真実を知らずに
妄想の教育論、でたらめな日本論を語っていた!
目次
1.戦前は小学生が人を殺す時代
2.戦前は脳の壊れた異常犯罪の時代
3.戦前は親殺しの時代
4.戦前は老人殺しの時代
5.戦前は主殺しの時代
6.戦前はいじめの時代
7.戦前は桃色交遊の時代
8.戦前は幼女レイプ殺人事件の時代
9.戦前は体罰禁止の時代
10.戦前は教師を殴る時代
11.戦前はニートの時代
12.戦前は女学生最強の時代
13.戦前はキレやすい少年の時代
14.戦前は心中ブームの時代
15.戦前は教師が犯罪を重ねる時代
16.戦前は旧制高校生という史上最低の若者たちの時代