絶望書店日記

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絶望書店主人推薦本
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』

冤罪、殺人、戦争、テロ、大恐慌。
すべての悲劇の原因は、人間の正しい心だった!
我が身を捨て、無実の少年を死刑から救おうとした刑事。
彼の遺した一冊の書から、人間の本質へ迫る迷宮に迷い込む!
執筆八年!『戦前の少年犯罪』著者が挑む、21世紀の道徳感情論!
戦時に起こった史上最悪の少年犯罪<浜松九人連続殺人事件>。
解決した名刑事が戦後に犯す<二俣事件>など冤罪の数々。
事件に挑戦する日本初のプロファイラー。
内務省と司法省の暗躍がいま初めて暴かれる!
世界のすべてと人の心、さらには昭和史の裏面をも抉るミステリ・ノンフィクション!

※宮崎哲弥氏が本書について熱く語っています。こちらでお聴きください。



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2004/5/15  だから!<著作権問題>じゃないのよ

 おまえら何回云ったら判るんだ!<著作権>と云うな!<スーツ権>と云え!
 そろいもそろっておまえらみんなスーツの手先か?!いや、べつに<スーツ権>じゃなくてもっと素敵な言葉があるならなんでもいいけど、とにかくスーツのやらかしてることに対して絶対に<著作権>とは云うな!
 Winnyの場合は作品そのものをただで流布させて、スーツだけではなく創作者にも1円も環流させない状況を一部で発生せしめたので一見<著作権問題>のようにも見えるが、開発者の47氏の意図はスーツを排除して創作者に直接対価を渡すシステムを再構築するために、スーツに支配されてどうしようもなくなった現行システムを一度破壊してしまうということらしいので、これは明確に<スーツ権問題>であって<著作権問題>ではない。
 その点、表面的には似たようなことをやりながらも巧みに<スーツ権問題>から人々の眼をそらそうとするレッシグとはまったく違う。それにしてもレッシグはタチが悪いな。あれこそスーツの手先だ。いや、判りやすい圧政を敷くスーツよりも、いかにも自由と正義のためのごとくに言葉巧みに純眞な人々をたぶらかすレッシグのほうがよっぽど悪質。今回の件に関して<著作権>などという言葉を使う者とともに、<スーツ権問題>から論点をずらそうとする者はすべて同罪。

 以前に著作権は<著作権>と<スーツ権>に頒けろと記したのは、たんに2つに区別しろということではなく、この2つは敵対する相容れない権利であることを明確に意識しろということである。少なくとも大陸法では横暴なスーツに対抗するために創作者たちが<著作権>を勝ち取ったという経緯があり、だからこそ<著作人格権>などというものがあって、スーツにすべてを売り渡すことが(スーツに完全に支配されることが)、理念上はできないようになっている。
 <著作権>が大事だという創作者の立場からは<スーツ権>など一掃されてしかるべきもので、まさしくスーツにとってWinny利用者の<権利>など潰滅に追い込むべき存在でしかないのと同じことである。<著作権>が対抗しているのはユーザーではなくスーツであることを、食前食後と寝る前起床時に毎日必ず想い出すように。

 なお、今回の件に関して「中間搾取」なんてな言葉が頻出して金の問題ばかりが取り上げられているが、<スーツ権問題>の本質は金ではない。スーツがコントロール権を握って創作に対して口出しすることが問題なのだ。
 訳の判らん連中がいろいろ関わって内容を薄める方向にしか向かわない。創作者も自分のやりたいことや、客受けなんてことよりも、眼の前のスーツにOKをもらうことだけに汲々としていて、しかもそれがプロの仕事であると本気で考えていたりする。スーツも企業の利益なんてことよりスーツ上司や関係各位にOKをもらうことだけに汲々としていて、結果として誰に対して何を訴えようとしているのか訳の判らんクズばかりが積み重なるという慘状となる。たんなるスーツの搾取が問題ではなく、創作者側の奴隷根性と創作を邪魔する<他者>が蔓延っていることが問題なのだ。これはやはりシステムを一度壊さないことにはどうしようもない。
 創作者側がスーツを雇って使うのなら、同じ金額をスーツに払ったとしても現在の<スーツ権問題>のほとんどは解決する。直接雇わなくとも中立の代行システムに創作者が金を払って利用する形態を取ればよい。その上で創作者が詰まらん作品を出したり、ユーザーの利益に反することをすれば、個々に淘汰されるだけである。じつに簡単な話になる。実際にはスーツの数と取り分も減って金の問題も解決するなんてこともあるかも知れんが、それはおまけだ。著作者の権利を守ることがほんとにそんなに大切なら、スーツに口を出させないのは当然のことでべつに難しい話ではない。
 コモンズになるべきはコンテンツではなく、こういう創作課程のシステムであり、あたしの云うところの<メディア>である。そういう意味で47氏の意図は正しく、レッシグはズレている。

 47氏逮捕に対して自分の利害に引き附けていろいろ云ってる諸氏ばかりだが、創作者にかこつけて己の利益を図ろうとするスーツ連中とそれでは代らん。
 47氏がどのような法廷闘争をするかは47氏の自由で、有罪になった場合の他への波及なんてものは考える必要は微塵もないし、必ずしも無罪を目指す必要もない。ほんとに現在の体制や法律に挑戦するつもりで逮捕も当然と考えているのなら、法廷で高邁な<スーツ権問題>論を展開するのもまた一興。既存の学者先生の論陣ではしょぼいのはたしかだが、そのあたりも47氏が選択することで、横から云うのは大きなお世話ではある。もちろん、無罪だけを目標にその他のことをすべて切り捨てることも本人の自由で、本人の意向が判らない段階であれこれ云ってもはじまらん。自分の思想として表明すればいいだけのことで。
 有罪になっても死刑になるわけじゃなし、民事でもせいぜい数兆円の話で大したことではない。数兆円の借金を背負ったことで本気でメディア革命を起こすなんてこともあるだろうし、できればレコード会社や映画会社に対する数兆円の借金を裏付けとした少額決済システムを立ち上げるなんてことになれば面白いのだが。このくらいのアクロバチックができなければ、金融工学だとかIT革命だとかのインチキ臭い話が幅を利かす時代に立ち会った甲斐がない。右から左に流すだけで大金を取る商売が成り立つんだから、こんなことが起こっても不思議はなかろう。
 いや、創作で金を取る<著作権>なんてものが成り立ったのがこれ以上にアクロバチックな話で、敵対しているはずのスーツが自分たちの生き残りに<著作権>という言葉を持ち出すなんてのはそれに比ぶればトリックとしては単純だな。47氏のやってることや云ってることが子供っぽいとかのたまう諸氏は、著作権成立の歴史なんてものも一度調べなおしてみられるのもよろしいかと想う。

 ただしかし、スーツを廃除して創作者に直接対価を支払うのに47氏提唱のデジタル証券システムみたいなややこしいことをやる必要はなく、iTunesミュージックストアみたいな緩いコントロールと対価回収の仕組みで充分だ。既存の企業やスーツが主導権を握らない中立的で低コストの<メディア>として成り立つように、P2Pなりウェブコミュニティーなりを活用して運営できればいいわけで。法律なぞどうなろうと関係がない。
 いかにも良さそうでじつは<スーツ権問題>の延命に繋がる現状のiTunesミュージックストアが上陸する気配もなく、判りやすいスーツの圧政が続く日本は、問題の本質が見えやすくて真に新しい展開が産まれる可能性もあるような気がしているのだが。
 スーツの一連の動きを見ていて、47氏とWinnyは想ったよりも世の中に影響を与えていたのだなと改めて想った次第。あたしがマカーなため識らなかっただけか。
 ともかく、<スーツ権問題>が片附いたあとに初めて<著作権問題>が浮かび上がるのであって、著作権を弛めるかどうかなんて話はその時ゆっくりやればいいことだ。物事には順番というものがある。判りましたね。

 ところで、1984年4月に大阪府警が暴走を煽動すると雑誌を摘発、ライター逮捕している。関係各位はこれが最終的にどうなったか調査してレポートを提出しておくように。ちょっと違う問題かも知れんが、東京の新聞には載ってないので詳細が判らん。煽動している雑誌が今回はスルーされてることと関連はないかね。警察や検察はこんな事件をあらかじめ調べておくくらいのシステムや体制は備えてるんでしょうか。
 この幇助罪だか教唆罪だかの逮捕と同じ年、同じ月、音楽テープと高速録音機を貸し出して客自身にその場で3分間でダビングさせる貸しテープ屋チェーンが、レコード協会に訴えられて営業停止となっている。店とレコード会社と利用者それぞれの云い分はWinnyとまったく同じで、レコード売り上げが大幅に減ってレンタルを規制する著作権改正がその月に可決した背景ともどもまったく同じで、ネットがどーしたデジタルがどーしたという話ははなはだ心許ないことではある。もちろん、録音機の開発者は逮捕されていないとは想うが。
 これも同じ年、同じ月、大阪有線が無許可で電柱にケーブルを張り巡らせて郵政省から営業停止処分を受けたのだが、無視して音楽放送を続けたうえに白昼堂々と違法架線作業を繰り広げて、社長の国会出頭要請も拒否するなんてな曲芸を見せている。
 世の中というのはさまざまな人々がさまざまことをしてもって、そうしてひとつひとつ創造してゆくものなのであります。