あたしはヒストリーチャンネルが好きでよく観ています。伝記物も戦記物も、もちろん歴史物もじつによくできてておもしろい。ただ、歴史物の最期に吉村作治が顔を出してきて、学者でなくとも云えるようなどうでもいい感想を述べるのだけはいかがなものかと想っておりました。
先日そんな吉村作治の話をぼーと聞いてると、ツタンカーメンの墓から見つかり発芽に成功、栽培されたと称され広まっているエンドウ豆はまったくの出鱈目であると云っておりまして、おっと想いました。あたしもあのツタンカーメンのエンドウ豆の話は胡散臭いと常々感じていたのですが、はっきり嘘だという説明を聞くのはこれが初めてのことでした。
吉村作治によるとこの豆を増やして配り始めたアメリカのおばちゃんが冗談を云っただけのことで、日本では弥生時代の遺跡から出たハスの種の発芽に成功した実例があるため広まったのだろうということです。
ほんとだとしたら、このアメリカのおばちゃんは大したハッカーで、このツタンカーメンのエンドウ豆は見事なバイオウイルス(変かい?)となるわけです。
もっとも、吉村作治が嘘を云っている可能性もありますが。この人は「ブードゥー教がどうして蛇と虹を結びつけるのか判らない」とか、あんたほんとに考古学者かいと首を傾げるような発言が多いのですが、これが嘘だったらなかなかやるなとあたしは見直すんですが。
また、あたくしが嘘を云っている可能性も大いにあります。この人の記憶はまことにあてにならず、いま聴いたことも忘れていて、あたしはまったく信用しておりません。そもそもツタンカーメンの墓からエンドウ豆なんて出ていないとかいう話も云ってたような気もしますが、どうにも自信がありません。
ウェブで検索してみると500ほどのページが出てきて、皆さん何故が素直に信じて一様に歴史の雄大さに感激し、あるいは一生懸命栽培して配ったりしています。嘘だと云う方はひとりも見つけられませんでした。とにかく豆は順調に増殖しております。
ためしに英語で検索すると日本人が書いたページばかりで、日本だけで広まっていることだけは確かなようです。
出鱈目な話に騙されてる莫迦な人たちであることだなあということを云いたいのではございません。その逆です。
ウェブを観て廻ると、日々のくだらない事件や政治なんかにくだらない感想を綴ったようなものばかりでして、愚息もげんなりしてきます。それに比べるとツタンカーメンのエンドウ豆の話は遥かに上等であると想います。あたしはと申しますと、林檎の新製品情報に一喜一憂する情けない状態に十年ぶりにハマっておりまして、とても他人樣のことをとやかく云えた身ではございません。
いくら何でももうちっと大きい物語が欲しいものです。こりゃ不況にもなりますわな。
ツタンカーメンのエンドウ豆は、喰えば普通のエンドウ豆よりうまいに違いありません。たぶん、あたしも喰うとそう感じると想います。よくよく考えてみますと普通のエンドウ豆だって古代から綿々と連なっているはずで、いや、何千年も墓の中でただ惰眠を貪ってただけのツタンカーメンのエンドウ豆なんかより遥かに悠久の歴史を伝えるもののはずなんですが、やっぱりツタンカーメンのエンドウ豆のほうがうまいと感じると想います。
これが商売の基本というものでありますな。メディアの基本でもありましょうか。とくに本なんかはこういう力がすべてのはずなんですが。
噫、ツタンカーメン王よ。畢竟、希望のともしびは過去と死者の国にしか存しないのでしょう哉?答え賜え。ツタンカーメン王よ・・・・
2003/1/28 ツタンカーメン王のマメ2も参照のこと。