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絶望書店主人推薦本
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』

冤罪、殺人、戦争、テロ、大恐慌。
すべての悲劇の原因は、人間の正しい心だった!
我が身を捨て、無実の少年を死刑から救おうとした刑事。
彼の遺した一冊の書から、人間の本質へ迫る迷宮に迷い込む!
執筆八年!『戦前の少年犯罪』著者が挑む、21世紀の道徳感情論!
戦時に起こった史上最悪の少年犯罪<浜松九人連続殺人事件>。
解決した名刑事が戦後に犯す<二俣事件>など冤罪の数々。
事件に挑戦する日本初のプロファイラー。
内務省と司法省の暗躍がいま初めて暴かれる!
世界のすべてと人の心、さらには昭和史の裏面をも抉るミステリ・ノンフィクション!

※宮崎哲弥氏が本書について熱く語っています。こちらでお聴きください。



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2000/10/21  円谷プロの基本を少しだけ

 『いまに見ておれ』の話が判りにくかった方のために、円谷プロの基本を少しだけ。

 円谷英二が個人的にやっていた円谷特殊技術研究所を母胎として、昭和38年に円谷特技プロダクションが設立される。その年に日活映画『太平洋ひとりぼっち』の特撮を担当するが、映画の仕事はほかになく、CMなど細々とやりながら一年で早々に経営不振になってしまう。ようやく存在に気付いたらしい東宝も、円谷の技術が外部に出るのはマズイと考え昭和39年に資本参加する。
 円谷英二は長男円谷一をTBS、次男皐をフジテレビに入れるなど時代の変化をいち早く感じ取っていたと同時に、東宝から独立したいと考えていたらしい。

 さて、取りあえず安定した円谷プロが最初に取りかかったのはフジテレビと組む特撮ドラマ『WOO』だった。これは大伴昌司、星新一、光瀬龍などのSF作家がブレーンとしてアイデアを出した宇宙怪獣物。脚本も何本か完成し、あとは撮影に入るだけだった。ここで円谷プロの親会社東宝とフジテレビの正式契約が交わされることになるが、なんと!契約書の「甲」と「乙」をどちらにするかで揉め、破談になってしまう!!
 それまで圧倒的に偉かった映画が少し斜陽となり、半端者に過ぎなかったテレビの地位が上がってきた微妙な時代背景を考えなければ判りにくい話だが、それにしてもくだらない理由ではある。

 ここで困ったのがオプチカルプリンターの行き先であった。そのころ渡米していた円谷英二はオックスベリー社で最新式の光学合成マシンを観て、その場でツケで購入してしまう。11万ドル、4000万円のマシンだ!貧乏だった円谷プロに買えるはずもなく、フジテレビがなんとかしてくれるだろうという天下の浪費家・円谷英二の出鱈目な判断だった。ところがそれが駄目になってしまう。キャンセルしようとしたら、すでに積み込んだ船が港を出ていた!太平洋を越えてくる前になんとかしないといけない!!
 結局、長男円谷一のツテでTBSが引き受けることになり、同時に『ウルトラQ』の企画が進められることになる。また、唯一の収入の当てがなくなった円谷プロのために『いまに見ておれ』の仕事を廻してやったのだろう。契約破談もマシンのTBS設置も4月で、『いまに見ておれ』放映開始は5月である。
 この最新鋭4ヘッド・オプチカルプリンターは世界に2台しかなく、しかもすでに国防省に納入されることが決まっていたのに円谷に引き渡されたという有名な話があるが、果たしてほんとにこんなことがあり得るのか、また現在の感覚では10億円近い値段もいくらなんでも高過ぎてあやしいとあたしは想うが(値段の証言はバラバラでかなりの幅がある)、アメリカでそれほど円谷英二の威光が強かったというのは間違いがない。菅井きんがいかに凄いかもお判りいただけることと想う。

 円谷プロ設立時には円谷英二の弟子だったベテランが結集するが、この世代はテレビに関わるのは抵抗があり、やがて離れていく。円谷プロ作品は金城哲夫など経験のない若手が中心になって創られていく。
 このあたりのことは三男円谷あきら氏インタビューに「東宝へ入れない人たちの面倒を見たという印象が強い」という証言がある。ちなみにこのインタビューには「円谷英二はウルトラマンより、マグマ大使に肩入れしてた」「いまゴジラを撮るとしたらCGで動きの早いハリウッド版ゴジラのようになっていたろう」などと、目から鱗が落ちまくりのお言葉満載で必読!

 『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』と作品は成功したものの、円谷英二の完璧主義と金銭感覚の無さで円谷プロは莫大な赤字を抱えることになる。また、大人向けに製作した『マイティジャック』が大こけし、金城哲夫は沖縄に帰り、円谷英二の跡を継いで社長になった円谷一も若死にし、円谷プロは息の根を止められてしまう。キャラクタービジネスで復活する最近まで円谷プロは死んでおり、古い世代にとってはやはり『セブン』で終わってる。
 今回初めて識ったが、オプチカルプリンターはCM撮影などで引っ張りだことなりTBSに毎月6000万円もの収入をもたらしたという。もしも、円谷プロがこのマシンを持っていたら、潤沢な資金で『セブン』以上の作品を創り続けていたかも知れん。そうなれば金城哲夫の悲慘な最後もなかったわけで、げにカタキは金ですな。
 もっとも、円谷プロなら外部に貸し出したりせず、とことんまで使い倒し、より多くの赤字を垂れ流していたような気もするが。いずれにせよ、買う金どころか全長8メートルのマシンを置く場所さえなかったのではありますが。
 金の問題もそうだが、大人向けのドラマが受けなかったことが金城哲夫にはショックだったようだ。その意味でも円谷一・金城哲夫コンビにとって中途半端に終わったはずの大人向けドラマ『いまに見ておれ』を考察する意味はある。番組に円谷プロのクレジットがなく、正式な資料に記録されず、証言もまったくないのはどういうことなのか、改めて暴き出せ!!

参考ページ
 円谷英二の生涯
 ウルトラQ全記録
 ザ・インタビュー ?円谷のぼる氏と?
 円谷英二氏の三男 円谷あきら氏にインタビュー
 特撮テレビ映画の個人的歴史
 それにしても金城哲夫のサイトがひとつもないな。どうなっとるのかね。