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絶望書店主人推薦本
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』

冤罪、殺人、戦争、テロ、大恐慌。
すべての悲劇の原因は、人間の正しい心だった!
我が身を捨て、無実の少年を死刑から救おうとした刑事。
彼の遺した一冊の書から、人間の本質へ迫る迷宮に迷い込む!
執筆八年!『戦前の少年犯罪』著者が挑む、21世紀の道徳感情論!
戦時に起こった史上最悪の少年犯罪<浜松九人連続殺人事件>。
解決した名刑事が戦後に犯す<二俣事件>など冤罪の数々。
事件に挑戦する日本初のプロファイラー。
内務省と司法省の暗躍がいま初めて暴かれる!
世界のすべてと人の心、さらには昭和史の裏面をも抉るミステリ・ノンフィクション!

※宮崎哲弥氏が本書について熱く語っています。こちらでお聴きください。



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2001/4/6  おまえら!この妄想を買え!!!! 2

 W杯期間中、2ちゃんねるのサッカー関連板は韓国がらみで大荒れで、そんな大暴れの嫌韓さんたちは何故か異様に韓国に詳しくて何故か韓国のことを広く識らしめたいと頑張っていて、云ってることも韓国の皆さんと双子のごとくに瓜二つで、あたしはこれまで日本と韓国はずいぶん違う国民性だと想ってたんですけど、ああ同じ血が流れている人々もやっぱり大勢いるんだなあ、解り合うってこういうことでこれが共催の成果なんだなと感心していたわけですが、そんなお祭りとはまったく関係なく突如として現れた2ちゃんねる史上最高の名スレと云っても過言ではないのが日本代表の不思議サカ-スレ、別名ワーワースレでありました。
 これは何かと申しますと、なんだか曖昧模糊としてよく判らん日本代表のプレースタイルを曖昧模糊としてよく判らんままに完璧に読み解き、新時代を切り開く驚天動地の結論を導くという大変なものなのでした。

 あたくしは常々、日本にはまともに点の取れるフォワードがいないんだから世界に例のない0トップシステムを採用すべきであると考えていたのですが、このスレで改めて気付かされたのは日本代表にはフォワードどころか1対1できちんと攻撃を防ぐ常識的なディフェンダーもまったくいないということでして、そもそも中タコなんかはアントラーズでやってる本職は中盤のボランチだったりして、つまり日本代表はキーパー以外の10人全員がミッドフィルダー、0-10-0という画期的なシステムを採用しているわけです。
 それだけではなくフォワードのつなぎ沢が何故かゴール前でシュートを打たずにボランチの稲本にパスを出したり、頼りないディフェンダーが抜かれてもその後ろに何故かフォワードがいて守備をしたりと、世界のサッカー常識を越えた縦方向のポジションチェンジを頻繁に繰り返しながら誰が点を取る役目で誰が守備をする役目なのかさっぱり判らんという、あの天才クライフでさえ考えつかなかったであろう真の意味でのトータルフットボールを実現させてしまっているわけです。
 今大会では韓、米、メキシコなどのようにとにかく走り廻って全員で攻めて全員で守るというスタイルの国が上位に進出して一見すると日本と似ているようですが、これらのチームはポジションは確立していて全員で攻めても最後はフォワードが点を取り、全員で守っても最後はディフェンダーが止め、また1対1できちんと勝負する至極まっとうなサッカーをしています。
 さらに、これらのテクニックのしっかりしているチームと違って日本はパスミスが非常に多くて、ただでさえポジションと役割がはっきりしないのにボールがどこに行くのか判らんわけですから敵も味方も混乱して、狹い範囲で密集して戦っていることもあってぐちゃぐちゃの泥仕合といった様相を呈します。そんな状態で簡単に押し込まれるのになんだかよく判らんままに危機を脱して、なんだかよく判らんままに得点してしまう。これを不思議サカ-と呼び、またワーワーと云うわけですが、ワーワーとはかなり以前からくだらないギャグとして頻繁に2ちゃんに登場していた以下のコピペのことです。

   


  ○○
 ○  ○   ワー
○ ● ○    ワー
 ○  ○
  ○○

 笑いも呼ばない脱力系コピペがよく考えてみると日本代表のスタイルを的確に表した図であったわけです。また、『キャプテン翼』との驚くほどの類似も指摘されております。
 ワーワーシステム論の最大の効用は、これまで日本のどたばたとした何とも頼りなげな試合を観ているとはらはらして胃がきりきりと痛くなり、決定力のなさにいらいらして血圧が上がるのに対して、この理論を身に着けていると「おっ、敵も味方も混乱してワーワーに持ち込んだ。こっちのもんだぞ」と安心して観ていられることでして、とにかく健康にはすこぶるよろしい。とかく面白くないと云われる日本サッカーが俄然面白く映るようにもなり、自身の身体でこれほどはっきり效果のほどを量れる理論をあたくしはほかに識りません。また、強豪国も日本と当たると何故か日本のレベルまで降りてくるという不思議や、中村俊輔が外された理由など、あらゆることがじつにすんなり説明できるようになるのです。
 さらには世界のサッカーの新たなる扉を開く革命的システムがここから生まれるのやも知れぬのですぞ!

 30年前のW杯でトータルフットボールを披露してサッカーの世界に根本的革命をもたらしたクライフは、新しい戦術が生まれなかった今回のW杯には失望しているとして「ブラジルは現実的でスペクタクルに欠ける」なんてなことをのたまっておられます。<現実>というのがクライフにとっては絶対的な悪で、詰まらない<現実>を打ち碎くことこそがサッカーにとって勝利以上の崇高なる使命なのですな。ななんと素晴らしい!
 なんか次の日本の監督はジーコなんだそうでして、4バックにして攻守の役割分担をきっちりさせて、中盤にテクニックのある4人を配して日本版「黄金のカルテット」を形成したりとだいぶこれまでと違ったシステムになるようです。
 しかし、ブラジル全盛期の黄金のカルテットはジーコという卓越した得点力を持ったミッドフィルダー(去年ロマーリオに抜かれるまでペレに次ぐブラジル歴代2位)がいたからこそのものでして、取り柄のテクニックや創造性でも日本のプチカルテットが本家に適うはずもなく、結局はワーワーシステムしかなくなるのではないかと期待しています。トルシエ日本がアジア相手にはもうちっとまともなサッカーをしていたのに、強豪国相手にはワーワーしかなくなった如くにして。
 ジーコはずっと監督になるのを拒否していて、いまだに中盤の華麗なパス廻しなんて古き良き時代のスタイルを最良のものと考えているようで、クライフ以上の夢想家のような気もします。窮屈なシステムばかりが発達して詰まらなくなったサッカーを変革しようといろいろ足掻くことでしょう。しかし、ジーコ率いるブラジル全盛期の黄金のカルテットでさえ敗れ去ったわけで、日本のプチカルテットには常識を切り裂く新戦術が希求されることになる。
 そのとき、システムを拒否したシステム、それも今回のブラジルのように個人技だけに頼るわけではなくまぎれもなくチームで構成するシステム、敵も味方も混乱に陷れるカオスを孕むシステムらしからぬパラドックスシステム、ワーワーシステムが花開く日が!クライフのトータルフットボール以来の世界のサッカーの根本的革命が日本からはじまる日が!

 あー、サッカーをあんまりよく識らない諸氏はそのまま丸ごと鵜呑みにはしないように。全員が1対1できちんと勝負できてフォワードがきっちり得点してくれるのなら、つまりW杯出場レベルであればどこの国でも当たり前にやってるまっとうなサッカーができるのなら、こんな廻りくどいことはしなくともいいんですから。
 しかし、結構シャレだけでもないような。正攻法の戦いでは不利な弱小チームは世界中どこでもありますし、おもしろい新システムの欲求はつねにあるわけですから。
 簡単に云うとワーワーとは1対1で突破する能力がないためにチーム全体で継続的にフェイントを仕掛け続けて偶発的な突破を導くということですが、動きよりも考え方のフェイントが大きな比重を占めるため異文明相手の戦いには非常なる效果がある。なんせフォワードがゴール前でシュートを打たずにパスを出すなんてことは日本人にさえ理解できないのですから、サッカー先進国にはどれほど大きな衝撃を与えることか!日本人サポーターをもフェイントに掛けて混乱させ、敵のシステムを精神面からも破壊する恐るべき戦術なのです。
 とにかく、世界中のメディアも、あのクライフさえも未だ気づいていないほど繊細でへんてこりんな独自のシステムを日本が今回のW杯で実践したことだけは間違いがなく、決定的な得点力がないあいだは、ひょっとすると日本サッカーにとっては未來永劫、ワーワーシステムが現実的な選択だったりもするのです。

 <現実>を追求することがすなわち敵も味方も幻惑する<ファンタジー>につながってしまう日本も、その<ファンタジー>を共同作業で読み取ってしまうワーワースレ参加者も、ともに幻視者、眞のファンタジストと云えなくもあるまい。たとえ勘違いであったとしても、それもまた。