絶望書店日記

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絶望書店主人推薦本
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』

冤罪、殺人、戦争、テロ、大恐慌。
すべての悲劇の原因は、人間の正しい心だった!
我が身を捨て、無実の少年を死刑から救おうとした刑事。
彼の遺した一冊の書から、人間の本質へ迫る迷宮に迷い込む!
執筆八年!『戦前の少年犯罪』著者が挑む、21世紀の道徳感情論!
戦時に起こった史上最悪の少年犯罪<浜松九人連続殺人事件>。
解決した名刑事が戦後に犯す<二俣事件>など冤罪の数々。
事件に挑戦する日本初のプロファイラー。
内務省と司法省の暗躍がいま初めて暴かれる!
世界のすべてと人の心、さらには昭和史の裏面をも抉るミステリ・ノンフィクション!

※宮崎哲弥氏が本書について熱く語っています。こちらでお聴きください。



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2002/8/15  ハトを盗む

 少年犯罪データにハトを盗むなんてな事件がいくつかありまして、不思議に感ずるお若い方が少なからずいるようです。元の記事にもはっきりとは書かれていないのですが、これはおそらく伝書鳩のことなんでありましょう。
 あたくしも世代的に伝書鳩について詳しく識ってるわけではないのですが、子供の頃に観たドラマなんかにはよく出てきましたので多少のイメージは湧きます。
 伝書鳩とはいまで云うところの携帯電話でありましょうか。それも生き物が運ぶわけですからまさしくポストペットなわけです。さらには軍隊や通信社でもないかぎり実用性は皆無で、レースでほかのハトと競うために飼うわけですから、これはもう完全にポケモンであります。
 ちなみに新聞社が伝書鳩を使っていたのはちょうどこの少年犯罪データの翌年の1965年の1月まででして、わりと最近まで使っていたのだなと驚きますが、考えてみれば文章だけなら電話や電報でも届けることができますが写真はそういうわけにはいかず、また伝書鳩というのは千キロの距離を休みなく時速80キロなんかで飛ぶそうですからファクシミリがまともに実戦に使えるまでは最速のメディアだったのでありましょう。現場から新聞社まで直接飛ぶことを考えれば、開通したばかりの新幹線と結構いい勝負です。

 実用性のまったくなくなった伝書鳩をいまではレースバトと呼ぶとのことで、いまだに数万人の愛好者がいるそうです。やってるのは高齢者がほとんどみたいですが。
 競馬馬とまったく同じ世界でして、血統のいいハトは1羽で数千万円もするのだそうです。ポスペでポケモンでおまけに高価とくれば、昔のお子さんが盗もうとするのも合点がいきます。こちらのページのまんなかへんには子供の頃のおともだちの「ながさわくん」が苦労して高価なハトを手に入れる話がありまして、昔のお子さんのハトへの情熱が窺えます。
 こんなページを求めてウェブをうろうろしていて気づくのは伝書鳩を飼っている方のページが極めて少ないことでして、知り合いが飼ってるとか、レース中に迷ったハトを飼い主に返してあげたとかという話がたくさんあるのと比べても異様なくらいの少なさです。
 ネットというのはあらゆる意味に於いて伝書鳩の正統なる後継者のはずなんですが。ネットをやってる側にはネットを伝書鳩に例えている方が無数にいるのに、伝書鳩を飼ってる方のほうにはそんな意識はさらさらないようで。日本伝書鳩協会のページに数万人の愛好者のうちネットを使いこなしているのは10-20%という推計がありましたが、あたしが見て廻った実感もそんなところです。
 普通の人にとってはもともと実用性などなかったはずなのに、いまでも伝書鳩を飼ってる方はほぼ全員が実用的に使われていた時代を識っている世代であるのと合わせて、なかなか興味深い現象ではあります。情報を伝える必要がなくなったことに意味があったのか無かったのか。いろいろねじれてこんがらがっています。

 えー、絶望書店日記をご愛読の皆様方に於かれましては何を云わんとしているのかすでにして薄々勘づかれているのではないかと存じますが、そうです、情報を伝えるという本来の役割はほかの技術に奪われんとして迷走しているあの古いメディアの話でございます。
 伝書鳩界には2大派閥があるようで、そのひとつの日本鳩レース協会の収支報告を見ると会費やハトの脚につけるナンバーで年間何億円もの収入があって結構よろしく廻っているようです。これのほかに高価なハトの売買市場があるわけでして、愛好者が日本全国すべて合わせてわずか数万人という規模を考えれば大したもんです。
 本の世界もさっさと実用性などとは完全に手を切って、このくらいの市場規模で廻すのが理想的ではないかと考えるのですが。
 しかし、ひとつ気になるのはヒトとの<競争>というのがハト市場の原動力となっていることでありまして、中身の情報や実用性とは関係なくヒトとの<競争>が原動力となっている市場というのはすでに本の世界にもあるわけでして、どうもこういうさもしい方向性しかないのでありましょうか。
 ハトを飼うなんてのはもともと王侯貴族の趣味だそうで、日本でも実用性とは違う意味で最初に飼いはじめたのは船場の旦那衆だったそうで、そういう優雅な、詰まらんコレクション競争に血道を挙げるのではなくすぐに手に入る本を自分だけの豪華な装幀をほどこすなんてな具合の高級な趣味になればいいのですが。ハトのほうはまだしも血統交配だとか訓練育成だとかの段階があって結構近い感じもいたしますが。

 レースには年間160万羽のハトが参加し、そのうちの38%にあたる60万羽が帰巣できずに迷子になるそうです。また、エサ代が莫迦にならないので病気やケガをしたハトはすぐに処分したりするのだそうです。そんな一方で日通の迷い鳩お届けサービス全自動記録システムなんてなのが発達したりして、実用性を失っての進化の袋小路と申しますか、バロック的な進化をいろいろ遂げているようでなかなかおもしろそうな世界ではあります。このハトたちは情報の代わりにやはり何かを伝えて飛び続けているのでありましょうか。
 あたしは情報論なんてのにはあんまりくわしくないので、情報を伝えなくなったあとのメディアがどうなるかなんて研究があるのかどうかよく識らないのですが、書物のゆくすえもこういう方面から考察してみるのもなかなかよろしいんではないかと存じます。
 こちらの方は本が伝書鳩以下ではないかと嘆いておられているのですが、そこで紹介されている例以外も含めると迷子率はいい勝負ではないかと想います。本のほうはいまだに実用品だとか必需品だとか考えるから悲しくなるだけのことでありまして、元来いい加減な物好きの道楽だと考えればなんということはありません。
 バロック的進化はまだまだだと想いますが、意識が変わればおもしろくなることもあるでしょう。情報を伝えなくなってからが本当のメディアの姿だと云えなくもありますまい。


2001/10/28  新しい戦争の古い挿絵

 絶望書店は一冊の本で記しました今回の戦争の挿絵を入荷いたしましたので、こちらから辿ってぜひともご覧ください。
 あらためて観るとこれはもうほんとうに凄過ぎる!今回のチューリングテスト戦争を完璧に描き切っております。
 いや、戦争だけではなく現在の世界全体の見事なる絵解きであります。
 オーウェルは共産主義国家も古い従来の戦争も終わったいまこそ、もう一度読み返してみるべきでありましょう。とにかく、これだけの絵をいまこそ掲げずしてなんとするかっっっ!!!!メディアに関わっている人間はどこに眼をつけておるのか?!!!!!!

 アブナー・ディーンに関しましては、日本のまんがに与えた影響を研究する必要があるかと存じます。
 文芸春秋新社版の『一九八四年』は表紙のモブシーンのほかにライオン像を背にした女性の絵が口絵に配された洒落た造りで、トキワ荘メンバーが眸にしているのはまず間違いありません。とくに藤子不二雄への影響は歴然でありましょう。
 とにかく黙って観ろ!!!!!


2001/8/14  この妄想こそが出版なのだ!

 版元ドットコムに版元日誌なんてのがあることに気付いたのは最近のことですが、ひとつの文章がどうにも気になって、その出版社エディター・ショップのサイトを覗いてみました。
 そこでメルマガ・ふってんとかいうのを最初から全部読んでみて、これはなんかよく判らんがただごとではないなと感じました。いや、近頃こんな面白いページは久々に観た!あたしはいわゆるトンデモや電波系にはまったく趣味がないが、これはそんなものとは違う何かがある!!
 早速、問題の久本福子『文化ファシズム』を読んでみました。うぬぬぬぬぬ。うぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ。

 『文化ファシズム』の内容と評価はCafe OPALの日記に的確にまとめられているので読むように。
 何だかよく判らない妄想を人に伝えたくて伝えたくて、ひとりで出版社を立ち上げてしまい、流通に阻まれながらも書店を一軒一軒廻ってなんとか読者を得ようとする。そして、己の想いを伝える武器として電脳と電網の力に目覚めてゆく!
 記号をデザインに使うことに覚醒する場面などは本当に感動した!昨今の電子出版などのぬるい議論に辟易しているあたくしには、これはもうハイパーカードを初めて識ったとき以来の感動だ!したり顔でマヌケな試みを繰り広げている連中とは違って、この人の電脳と電網への洞察は見事に核心を突いている!目先を変えるだけの小手先の技術ではなく、已むに已まれぬ魂の発露であるからだ!!
 そんな部分だけではなくこの本にはとにかく感動した!!あたしが新刊で感動するなど、この十年以上なかったことだ。何故か同じ文章を二度連ねるレイアウトなんかも面白い本であるし。
 この本に書かれている対象についてあたしは智識も興味もないので、どの程度まで間違っているのかは識らんが、なんにせよ本を出すというのはハタ迷惑なもので、云ってしまうと出版とはテロリズムなのだ!人を斬り裂くほどの妄想でないと出版する価値などないのだ!この本はそのもっとも根源的なことを体現しておる!!

 エディター・ショップは版元ドットコムから抜けてしまったようで、これだけの美味しい素材をむざむざ逃してしまうとは、出版社の集まりとしてまったく情けない限りではあります。実際に接すればそうとう厄介な人物であることは想像つきますが、猛獣遣いの能力がないなら編集者など辞めてしまったほうがよろしい。それこそ電脳と電網がある時代にはゴクツブシなだけの不必要な存在です。
 版元日誌には版元ドットコムの売上げが公開されています。ウェブで本を売ることがどれほど難しいかあたくしは識り抜いているつもりですが、それにしてもこれは酷い。エディター・ショップなんかをうまく遣いこなせばアクセスが百倍になって売上げも少なくとも十倍以上には伸ばせるでしょうに。
 読者に訴えかけるサイトも創ることのできない人たちの出版とはいったいなんなのでしょうか。そんな人たちの出す本にどのような意味があるのでしょうか。版元日誌でひとつだけ削除されているのが最初にあたしを惹きつけて実際に本を手に取らせた文章ですが、その他のおよそ読むに値しない凡庸な文章を漫然と綴っている編集者たちの出版とはいったいなんなのでしょうか。『蜘蛛男』の如きメッセージ以外は当然排除すべき場所だということさえ想い至らぬ人々に、読者から金を取って出版する資格なぞあるのでしょうか。
 本を直接売る話で「直販もできない輩には、出版などする資格は最初からない!」とあたしが云っているのは、本とはほかの商品とは違ってメディアであるからです。出版社とはほかのメーカーとは違って、受け手に直接訴えかけるのが商売であるはずだからです。
 いや、いまどきほかのメーカーでも直販しようとしています。中抜きしてコスト削減を図っているだけではなく、明確な商品メッセージを完全にコントロールしたままユーザーに届けたいからです。なんとなれば、家電だろうと服だろうといまや実用品ではなくメディアに近くなってきているからです。
 むしろ出版社だけがメディアの意識を無くしている。意識はあったとしても能力がない。こんな連中の出す本がいままで売れていた方が異常です。そんな異常事態が続いてしまったがために、あたかも本が実用品であるかのような勘違いしたままの間抜けな出版社があったりするのです。そもそも、こんな高邁な話以前に、あんたがたにはどうしてもどうしても人に伝えたい妄想などあるのか!?
 こんな連中に頼っている書き手も同じです。ほんとうにどうしてもどうしてもどうしてもどうしても人に伝えたい妄想があるなら、こんなヌルい連中と付き合っていられるわけがない!!己の手でなんとか読者に届けようと足掻くはずだ!!そう、久本福子の如くに!!!!!!
 いまの日本でほんとうの書き手は久本福子だけで、ほんとうの出版社はエディター・ショップただひとつだけだ!!!!!!!!!!!!どうしても抑え切れぬ眞の妄想を胎内に宿せぬ者は、流れを邪魔をするうえにただでさえ乏しい利益を簒奪する出版界の寄生虫に過ぎんのだ!!!!!!!!!!!!反論できる奴はいるのか????????!!!!!!!!!

 エディター・ショップぐらいの苦労を重ねてみてもうまくいかない場合は、誰かの陰謀ではないかという妄想を抱くのも無理からぬことではある。むしろいまの出版流通が当たり前でこれを維持しようなどと考えるほうが異常者であるだろう。さらにはまともな努力さえ怠りながらブックオフのせいにしたり、果ては読者のせいにしたりする妄想が蔓延しておる!エディター・ショップのほうがよっほど健全だ!!
 Cafe OPALの日記は『だれが「本」を殺すのか』に関する部分を読み誤っている。『だれが「本」を殺すのか』は出版界守旧派の意向を受けて問題を隠蔽するために書かれたという『文化ファシズム』の記述はまさしく正鵠を得ている。もっとも、それに気付かないくらいに脳天気なノンフィクション・ライターであるというのがほんとうのところであろうが。
 『だれが「本」を殺すのか』が駄目本だという文章はあちこちで観たが、これほど的確になぜ駄目かを云い当てたものを初めて読んだ。電脳や電網に関する記述と同じく、『文化ファシズム』の出版流通に関する指摘は悉く澄み切った慧眼のなせる術だ!同じく魂の発露の問題であるからだ!逆に云えば、この人と反対の妄想を抱いている連中に、いかに魂がないかが識れるというものだ!!

 いまだ、出版や本に強靱なる妄想を抱けると自負する諸氏は、エディター・ショップのサイトから直接『文化ファシズム』を買って読め!そして、泣け!
 絶望書店主人は強く推奨す!!

    2002/6/27 おまえら!この妄想を買え!!!!も見よ!!


2001/6/27  坂本正治を読みたまへ

 ウェブと印刷媒体とを問わず、現在もっとも優れたる文章であると絶望書店主人が認むるところの『屑籠通信』が、ようやくまとめてアップされました。なかなか広く皆さまの眸に触れるようにならないので、よっぽどあたしが勝手にアップしてやろうかしらんと想い詰めておりましたところでもあり、まことに結構なことではあります。
 本とは何ぞ?!に記したような塩梅で一年以上前に発見してからずっと感心させられてばかりで、「悔しいな何とか見返してやりたいな」とあたくしも対抗して日記などしたためはじめたのですが、どうもなかなかにしてあそこまでの境地には達せませぬ。敵はきちんと毎日書いてるのですから、最初から勝負にも何にもなってないわけではありますが。
 諸氏も絶望書店日記なぞ読んでいる暇があるのなら、あっちを全部読みなさい。

 坂本正治最初の著作である『ニューヨーク武芸帳』も読んでみることです。
 あたしも一年間探索してようやく先日一冊掘り出したところで、あんまり売れなかったのだろうと推察いたしますが、却っていまのお若い方のほうが読んでピンと胸に来るものがあるのではないかと愚考いたします。前途渺茫たる学生さんには殊に強く推奨いたします。
 いずれかの棚に並べましたので探してみてください。まあ、絶望書店のお客であればどこにあるかはすぐお判りのことと存じます。図書館に行ってもありますし。

 なにやら、お店もはじめられるようで、ほんとは開店してからリンクを張ろうと想っていたのですが、なかなか幕が上がらないので痺れを切らしたような次第です。
 ワントウワン・マーケティング協議会とかいうののスペシャルレポートでも、あたしが識る限り唯一読むに値する瞠目すべきメディア論やマーケティング論を展開されているのに、実践となるこの店舖はずいぶんとまたギャップがあるのが逆に興味を掻き立てるところです。
 いや、まだ準備段階のこととて評価は早いのですが。この店の挫折とその後の成長具合も、メディアと情報の流れに格別の執着を持つ絶望書店主人の大いに注視するところであります。
 文章はあちらのほうが優れていても、メディアとしてはまだまだ絶望書店のほうが上という余裕であります。もっとも、絶望書店以上のメディアなどというものをあたしくはついぞ観たことがないのですが。
 そろそろ顕れてくれてもよさそうなもんだとは想っております。


2001/1/19  ニジンスキー式読書法 2

 ニジン式読書法の流体速度が遅かったようなので、倍の速さにしてみました。
 うちのでは充分に速いのですが、このプログラムではマシン速度によって違ってきたりするもんなのでしょうか。動く原理がまったく判っておりません。
 そうそう、IE4とネスケ4以上で動作することを表示するのを忘れておりました。読むことの適わなかった諸氏には、大変失礼いたしました。



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